働き方改革で人材不足が加速する?~離職率増加を防ぐには~

2019年4月に本格的に始動した働き方改革。
それぞれの企業がそれぞれに合った改革方法を模索・実行していることでしょう。
しかし、そんな努力も虚しく離職率は減るどころか増える一方……という声をたびたび耳にします。
もしかしたら「働き方」改革の方向が間違っているのかもしれません。

離職率は夏に増加する

株式会社OKANが全国の20~50代の3,760名対を対象に行った離職に関する調査によれば、働き方改革以降、約4割の企業で離職率が増加したことがわかりました。
特に、ボーナスや長期休暇のある夏に離職が増える傾向があり、今後も続く可能性があります。
離職を検討する(実際にしたことがある)タイミングについての質問に対し、「ボーナス時期に離職をした(検討した)」が31.8%、「夏季休暇で離職をした(検討した)」が20.1%という結果だったからです。
働き方改革を行い、より良い労働環境にしようと努力しているはずなのに、どうしてこのような状況になっているのでしょうか。

人材不足国家、日本

そもそも超高齢社会である日本にとって、人材不足・労働力不足は課題として以前より取り上げられていますね。
単純に働き手となる年代の減少も問題ではあるのですが、次のような理由から「働きたいけど働けない人」「働き続けたいけどやむを得ず離職する人」が多いことも問題の一つであるといえます。

・ 出産・育児
・ 介護
・ 健康の問題で働き続けることができない

これらを少しでも解決するために、働き方改革は始まったわけですが、結果として離職率が増加してしまっている企業は、働き方改革とあわせて謳われている「働きがい改革」に傾きすぎているのかもしれません。

「働きがい」より「働き続けやすさ」

仕事に対する満足度低下や離職理由には「モチベーター」と「ハイジーンファクター」の2種類しかないとアメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグは提唱しています。
この2種類の違いは以下のとおりです。

種類満足度低下や離職の理由
モチベーター仕事のやりがい、責務、企業理念など
ハイジーンファクター自身の健康状態、家庭との両立、同僚との関係(職場環境)など

わかりやすくいうと、モチベーターは「働きがい」を、ハイジーンファクターは「働き続けやすさ」を重視するということです。
ここで前述の調査に戻るのですが、実際に働いている人たちに「モチベーター」と「ハイジーンファクター」のどちらを大切にしているか質問したところ、次のような回答が得られました。

モチベーター:27.8%
ハイジーンファクター:72.2%

つまり、「働きがい」より「働き続けやすさ」を重視する人が3倍もいるということです。
この2点に関して、企業はどれだけ従業員支援ができているでしょうか。
調査によると、どちらに対しても支援できている企業は10社中1社にも満たない結果です。
従業員が支援を希望しているハイジーンファクターについて支援できている企業もまだ少なく、従業員の期待・希望になかなか企業が応えられていない状況が浮き彫りとなりました。
個人のモチベーションの維持や生産性向上にも「働きがい」は重要ですが、そこにばかり力を注いでも意味がないことがこの調査で明らかになりました。
「頑張っていろいろと働き方改革をしているのに離職率が増える…!」という企業は、働き方改革をすすめるなかで今一度、従業員の立場に立ち「働き甲斐への支援」と「働き続けやすさへの支援」の割合を見直してみてはいかがでしょうか。

<参考>
「<全国離職原因調査>離職多発注意報!!働き方改革で人材不足が加速!3社に1社で離職増加離職の原因は働きがい改革?7割以上が”働き続けやすさ”改革を希望夏季休暇・ボーナスでさらなる離職の可能性も」(株式会社OKAN)

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中川果穂株式会社ドクタートラスト 広報

投稿者プロフィール

幸福度や労働生産性が高いと評される北欧(ノルウェー)へ留学した際、仕事に対する日本と北欧の良いところ悪いところをひしひしと感じてきました。この良いところをお伝えすべく、北欧の労働環境などに関しての情報はもちろん、身近な話題や疑問を分かりやすくお仕えできるよう日々勉強中です!
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