クール・ビズは何のため、誰のためのものか

2005年から始まったクール・ビズは、すっかり日本社会に定着しているように感じますが、実際の運用に際しては、まだ試行錯誤している部分があるようです。

大手銀行の動き

2019年6月、メガバンクの一角である三井住友銀行が、7月と8月の2ヶ月間、顧客に接することのない本店勤務の市場部門や総務部門の社員を対象に、Tシャツ、ジーパン、スニーカーというカジュアルな軽装での勤務を認める新制度を発表しました。
“お堅いイメージ”がある銀行が、こうした思い切った制度を導入したことでマスコミのニュースにも取り上げられ、視聴者からも賛否両論の意見が出るなど、ちょっとした話題になったようです。

クール・ビズの目的に変化?

Tシャツやジーンズは環境省が公表している「スーパー・クール・ビズ」でも「△(微妙)」となっておりまして、それを銀行が採用したということで大きく取り上げられました。
そもそも、クール・ビズ自体は環境省主導で、夏場の冷房に使う電力を節約する目的で始まり、英語の「Cool(格好良い)」と「Biz(仕事)」を併せたものです。
その成り立ちを考えると、Tシャツとかジーンズに疑問を呈する人がいるのも頷けるところはあります。
ただ、企業サイドの観点からは、最近のクール・ビズは、従業員の健康面やストレスに配慮している部分が多くなっており、高温多湿な日本の夏に汗だくで電車に揺られて通勤することを避けたり、またカジュアルな服装でリラックスした気持ちで仕事をできるといったことを狙っているようです。
実際、この三井住友銀行の試みも、9月に行員にアンケートを取って、行内で評判が良ければ来年以降、営業職や全国の支店にも広げていくことを検討するとのことで、あくまでも主体は自社の社員です。

クール・ビズの浸透度合いは?

企業で、こうした新たな試みが実施され、「クール・ビズ」という言葉自体の世の中での認識率も極めて高くなっている中ですが、実は、今でも、たとえば男性の営業職がお客様を訪問する場合は、ネクタイは締めないまでもスーツの上着は着用するケースが多く、実際に訪問した際に受付で「弊社ではクール・ビズを実施しております」という立て看板を見て、上着を着ないでミーティングに臨むといったことがままあるようです。
訪問する側とされる側が、お互いコミュニケーションを取れば良いだけのことなのですが、なかなかそれができないのが「日本的」でもあり、実はクール・ビズ自体が、まだ日本社会に根付いていないことの証左だと思います。

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浅田 徹也株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

30年近く、銀行員として為替変動による企業のリスクを如何にヘッジするかのアドバイスをしてきました。
現在は、企業の健康経営をサポートさせていただいています。人事・労務面でのさまざまなリスクを軽減し、中長期的な成長に貢献することができる今の仕事に非常にやりがいを感じております。

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