法改正でパワハラ対策が義務化されます!

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ニュースでも一部取り上げられていましたが、2019年5月29日午前、参議院本会議での可決により一連の働き方関連法の一つとして労働施策総合推進法の改正が成立したのをご存知でしょうか?
2020年4月に大企業、努力義務期間を挟んで中小企業にも2年後に義務付けが見込まれます。

その中でも大きなトピックとしては、日本でこれまで明確な定義づけのなかったパワーハラスメント(以下「パワハラ」)を初めて定義づけし、防止措置を義務化したことです。

背景には、パワハラを含む「いじめ・嫌がらせ」についての厚生労働省の労働局への相談件数が、2017年度実績で約7万2,000件に上り、相談内容別としては6年連続最多を更新して年々増加していること、ハラスメント等が原因とされる自殺やメンタル不調、ハラスメントを要因の一つとする裁判や調停などの増加などがあり、法制化に踏み切ることになりました。

法改正の内容は?

日本では、ハラスメントの種別ごとに紐づく根拠法が異なります。
今回のパワハラは、セクシャルハラスメント(以下「セクハラ」)やマタニティーハラスメント(以下「マタハラ」)に続き法規制された形です。
これまで、パワハラについては経済界も指摘するように、当事者同士の関係性や業務内容、職場環境など様々な条件により態様は異なり、「これがパワハラ!」という模範解答のようなものはなく、明確な定義づけがありませんでした。
今回の法改正では、防止措置義務を事業主に課すに当たり、平成23年度「職場いじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」で「職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と整理されたパワハラの概念を定義づけし、防止措置を義務づけた形です。

具体的には、以下の対応を義務化することになります。

◆国・事業主・労働者に対する、他の労働者の言動に注意を払う責務
◆事業主に対して、被害を相談した労働者への解雇など不利益な取り扱いの禁止
◆事業主に対して、厚生労働省の示した定義に則り、パワハラ防止のための措置
◆事業主に対して、相談体制の整備
※詳細部分は今後、労働政策審議会(厚労省の諮問機関)で議論され、指針として示されます。

日本のハラスメント対策の現状と今後

これまでに、すでに多くの判例などがあり、残念ながら自殺者なども発生し社会問題となっているパワハラ防止について法制化されたことは大きな一歩とも言えます。
しかし、これまでのセクハラやマタハラの法規制と同様に防止措置の義務化が柱となり、実際の行為への罰則規制は見送られました。

セクハラ防止対策が先立って2007年に法制化がされましたが、2016年時点で相談窓口設置を行っている企業の割合は4割未満。
対策を何も講じていない企業が約40%に上り、2017年厚労省調査でも未対策企業は約35%であり、深刻なセクハラ被害は減少したとは言い難く、今回の法規制の実行力を不安視しする労働組合代表などは、ハラスメント行為自体を禁止し、罰則を伴う法規制を求め続けているのが実情です。

世界的には、セクハラやパワハラなどの区別なくハラスメント行為全体に対して罰則を伴う法律で規制する国が主流で、先進7か国では日本だけが防止措置に留まる状況です。
また、日本も加盟する国際連合(国連)の機関「国際労働機関(ILO)」の2019年年次総会では、今年は職場でのハラスメントや暴力を禁止する国際条約を制定する見通しで、合意すれば各国のハラスメント対策の前進するきっかけともなり、加盟国日本も今後批准しハラスメントへの罰則を設ける可能性も高まります。

企業や働く人に求められること

日本の選択が今後どの様になるかは断言できません。
しかし、もし法改正が進み罰則規制が付随されればハラスメント自体の件数は減るかもしれません。
ただ、それは同時に働き方やコミュニケーションの自由度を下げることにもつながりかねない危険性をはらんでいるのも事実です。
今回の法改正に則った企業の取り組みはもちろん必要なことではありますが、一人ひとりが当事者の意識を持ち、決して許されない行為であることを認識して、法律に頼らずハラスメント自体を無くすための行動が強く求められます。

今回の法改正を面倒に感じるのではなく、社内や部署内でのハラスメントに対する認識の向上や信頼のおける人間関係構築のきっかけと考え、対策に取り組んでみてはいかがでしょうか。

<参考>
・ 「職場のハラスメントについて」(厚生労働省)
・ 「明るい職場応援団」(厚生労働省ポータルサイト)
・ 「パワハラ対策導入マニュアル」(厚生労働省ポータルサイト「明るい職場応援団」内)

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唐澤 崇

唐澤 崇株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

皆様と同じ働く者としての目線で、事業者・従業員どちらにとっても気付きとなるような情報をお届けできるよう発信させて頂きます。

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