皆で休めば怖くないけど、一人で休むと申し訳なくなる私たち

毎年お楽しみのGW、今年は新天皇の即位に伴い通常よりも祝日数が増えました。
株式会社マクロミルが、働く男女1,000人を対象に行ったアンケート調査「働く男女1,000人に聞く 2019年ゴールデンウィーク調査(2019年3月実施)」によれば、2019年の「今年のゴールデンウィークは最大で何連休取得できそうか」という設問への回答は、「10連休取得予定」が圧倒的に多く、全体の42.6%でした。
読者のなかにも10連休だった方は多く、旅行に行くなり、のんびりするなり、個々人の方法で楽しんだことと思います。
この10連休は世界的にも比較的目立ったようで、中国の知人から「10連休って本当? うらやましい!」と連絡がきました。

ちなみに中国でも5月1日は労働節という祝日が設定されているのですが、ちょうど4日が土曜日であったことから、間の2日、3日も祝日とし、4連休を設けたそうです。
ただ、これにはからくりがあって、2日、3日を無理やり休みにする代わりに、前後の日曜日を「平日」という扱いにしています。
つまり、5月中の実質的な休日数は変わっていないのです。
……なかなか厳しいしくみですね。

日本は祝日大国という驚きの事実

さて、こうして2019年の最大の目玉イベントともいえる10連休は儚く過ぎ去り、すでに6月に突入しております。
6月といえば……。
この話の流れからお察しいただけると思いますが、1年間で唯一祝日がない月です(従来の「天皇誕生日」であった12月23日の取扱については、本稿執筆時点では未定ですので、2018年までの祝日に基づいています)。
5月時点で、6月のカレンダーを悲しそうに見つめている人を私は幾人も目撃しました。

しかし待ってください!
確かに6月は祝日がありませんが、逆の視点を持つと「日本では6月以外は毎月祝日がある!」とポジティブにとらえることができます。
毎月祝日があるなんて、実は世界でもまれなこと。
意外や意外、日本は世界でもトップクラスの祝日数を誇っているのです。
具体的には、日本の法定の祝日は年間16日と定められている一方で、イタリアでは年間10日、イギリスとフランスでそれぞれ8日、ドイツでは年間7日しかありません

祝日がたくさんあっても、「休むのは下手」と言われる

ここまで、日本が祝日大国だとご説明しましたが、その一方で「日本人は休み方が下手だ」とよく耳にしますよね。
私自身、日本以外の国で働いたことがないので、果たしてこれをそのまま信じていいのかは、わかりかねるところがあります。
けれども、欧米企業とやり取りをするなかで、「クリスマスから年始までは冬休みです」という旨の自動返信メールを頂戴し、
「え、ずっと休みなの?? うらやましい!というか年内に決着付けたかったのに困る!」
と、長期休暇への嫉妬と業務的焦燥感でいっぱいになった経験はあります。

また、いわゆる「休み方」でやり玉にあげられるのは「有給休暇」ですが、これについては、当メディアでも何度も触れているように、日本では他国に比べて取得率が低く、そのために「企業が従業員に有給休暇を5日取得させる義務」が2019年5月から施行されています。

詳細はこちらの記事を参照ください。

ちなみに、総合旅行サイト・エクスペディアの調査「世界19ヶ国 有給休暇・国際比較調査2018」によれば、有給休暇の取得について「罪悪感がある」と答えた人は、日本人で58%にのぼり、これは世界でも最も割合が高いことになっています。
「あの、来週…お休みを取りたいのですが…」
と後ろめたい気持ちになりながら上司に取得申請をしたことのある方も多いのではないでしょうか。

その一方で、祝日や土日など、「みんなが休む日」には、なんの罪悪感もなく、大手を振って堂々と休むのも、私たちの特徴です。
有給休暇も、カレンダーの色が赤かったり青かったりする日も、どちらも「休み」という点では同じはずだと考えると少し不思議ですが、「私だけが休む」「みんなで休む」の間には天と地ほどの差があるのかもしれません。

「みんなで休めば怖くない」に慣れきってしまった

祝日の話に戻ります。
そもそも、私たちが「祝日」あるいは「旗日」と呼んでいるものは、「国民の祝日に関する法律」に定めが置かれています。
そして、同法によれば「祝日」の本来の目的は、以下の通りです。

<国民の祝日に関する法律>
第1条 自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞつて祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを「国民の祝日」と名づける。

どうですか、皆さんは「美しい風習を育てつつ、より良き社会、より豊かな生活を築きあげるために」祝い、感謝し、そして記念していますでしょうか。
本来は、感謝するために休む日であるのに、祝日自体が「感謝の対象」と化しているような気がします。
私も「そういえば今日って、なんの祝日だっけ?」と夕日に問いかけることがあり、本来の意図を逸脱した祝日の過ごし方をすることがしばしばです。

また、そんな実態に呼応するように、2000年に施行された「国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律」では、これまで「〇日」と指定されていた祝日を、「第〇月曜日」と、月曜日に設けることで、3連休を作るいわゆる「ハッピーマンデー」が始まりました。
10月の「体育の日」がもともとは10日に固定されていたこと、東京オリンピックの開会式の日に根拠があること、懐かしいですね……。

かくして、休むのが下手な私たちは、「祝日」という強制休日制度によって、罪悪感を持たずに休むことができているのですが、今年のGWの旅行客が過去最高だったことからもわかるように、行楽地も観光地も新幹線も高速道路も、とにかく大混雑の嵐でした。
そして、その需要と連動するように、航空券や宿泊料金が通常より高く設定されていることもままあり、「休みはうれしい!旅行は楽しい!」と「高い!混んでる!」の両方を感じた人も多かったでしょう。

日本人が「休み方が下手だ」とされ、実際に「有給休暇の取得率が低い」と数字を突き付けられるわけですが、実はこの背景には、「祝日」によって「みんなで休む」ことに慣れきっていることがあるのかもしれませんね。

<参考>
・ マクロミル「令和最初のゴールデンウィーク、働く男女の4割が10連休予定!2019年調査」
・ エクスペディア「世界19ヶ国 有給休暇・国際比較調査2018」

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蜂谷未亜株式会社ドクタートラスト 編集長

投稿者プロフィール

出版社勤務を経てドクタートラストに入社。産業保健や健康経営などに関する最新動向をいち早く、そしてわかりやすく取り上げてまいります。
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