手放しで喜べない定年70歳!高年齢で雇用されて賃金減となったときの話

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2019年5月15日公表の高年齢者雇用安定法改正案では、希望する高齢者が70歳まで働けるように企業に努力義務を設けることとされています。

現行法:企業の義務改正案:企業の努力義務
①定年延長(65歳まで)①~③(定年延長は70歳まで)
②定年廃止④他企業への再就職支援
③再雇用(契約社員など)⑤フリーランスで働くための資金提供
⑥起業支援
⑦NPO活動などへの資金提供

これにより、働く意欲のある労働者が長く働けるようになることは一見すると良いことのように思えます。
しかし、実際のところ現在の65歳まで雇用が延長されている現状でも定年前より賃金は低くなることが報告されています。
そのため、定年前とくらべて賃金が大幅に減ってしまった場合には給付金が補填される制度「高年齢雇用継続給付」があります。
今回はこの制度についてご紹介します。

継続雇用者の賃金水準

東京都労働産業局「高年齢者の継続雇用に関する実態調査」によれば、60歳を超えて継続雇用された雇用者の賃金は以下のとおりです。

所定時間内賃金 定年時10割とした場合
・ 5~6割未満:23.3%
・ 6~7割未満:22.6%
・ 5割未満:11.7%

資料によると継続雇用者の57.6%は定年時の「7割未満」の賃金に減ることとなります。
その中でも11.7%の人達は「5割未満」の賃金まで減っています。

「高年齢雇用継続給付」とは

「高年齢雇用継続給付」は、定年退職者の再雇用後の賃金が定年前の賃金の75%未満に低下した場合、低下幅の一定部分が雇用保険から補填される制度で、「61%未満」に低下したとき、補填幅が最大になるようにされています。

<金額例>

60歳到達時の賃金月額が30万円である場合の支給額の例
1.支給対象月に支払われた賃金が26万円のとき:賃金が75%未満に低下していないので支給なし
2.支給対象月に支払われた賃金が20万円のとき:低下率が66.67%で61%を超えているので支給額16,340円
3.支給対象月に支払われた賃金が18万円のとき:低下率が60%なので支給額27,000円

手続きは事業主経由でハローワークに申請手続きを行う必要があります。
詳細な受給要件などは文末の参考サイトで確認することができます。

今後70歳まで雇用が延長された場合

今回の高年齢者雇用安定法改正案では、70歳までの雇用については企業の努力義務となっています。
しかし、仮に70歳まで雇用が延長されたとして、企業は高齢の雇用者に対してどれだけの仕事を任せ、いくらの賃金を支払うのでしょうか?
高齢者の雇用を維持することによって、逆に下の世代への負担が増し、企業の業績も圧迫されては元も子もないでしょう。

そうなると短絡的に考えて、高齢雇用者の賃金を下げればいいだろうと思うかもしれません。そうなると、下がった賃金では生活できず、それを補うために70歳まで給付金が支払われ補填するという流れになるかもしれません。
給付金によって政府の財源が減ってしまい、税金の増額等々で結局は国民の負担は増えていくこととなります。
雇用延長についてもまだ決定事項ではありませんが、今後こういった問題が企業に対しても、雇用者に対してもさまざま出てくることでしょう。
労働者としては給付金を貰えるのはありがたいことですが、将来にわたってそれを維持していくことができるか疑問も残ります。

<参考>
・ 東京都産業労働局「平成24年度高年齢者の継続雇用に関する実態調査」
・ 厚生労働省「Q&A~高年齢雇用継続給付~」

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森本 啓介

森本 啓介株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

総務・経理業務の経験から、企業の労働環境を向上できるような記事やトピックをお伝えしていきます。また、昨今の働き方改革に伴う業務効率化についても積極的に情報を発信していきたいと思います。
【保有資格】第一種衛生管理者

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