~ESG投資の観点から~企業の健康経営と投資家動向

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働き方改革法が施行され、企業の産業保健への関心も高まっている昨今ですが、今後、投資家の間でも企業の健康経営への取組姿勢を重視する動きが広まってくる可能性が高まっています。

健康経営への関心の高まり

ご存知のように、わが国では経済産業省と東京証券取引所がタッグを組み、企業の健康経営への取組みが、投資家が投資銘柄を選定する際の指標に成り得るしくみを作り、それが企業の産業保健への積極的な取り組みを促すことを目指して、平成26年度から「健康経営度調査」による“健康経営銘柄の選定・公表”を開始しています。
さらに平成29年度からは中小企業も対象に含めた形で「健康経営優良法人認定制度」が始まりました。
そして、昨今の働き方改革推進に向けての政府の強力な後押しもあって、「産業保健への取組み」を、これまでの「コスト」や「守り」といった位置づけではなく、「前向きな投資」として捉える企業が増えてきています。
実際、この「健康経営度調査」への回答企業数は過去5年間増加の一途を辿っており、調査開始初年度の回答企業数は上場企業493社のみでしたが、直近では上場企業859社、未上場企業941社へと急増しており、企業の健康経営・産業保健への関心が高まっていることがわかります。

投資家への浸透は?

さて、こうして健康経営に積極的に取り組むことの重要性は企業の間で急速に広まってきているわけですが、それが生み出す具体的効果として次の点が見込まれています。

① 社員の活力上昇による生産性の向上
② 優秀な人材の確保
③ 企業のブランドイメージの向上
④ 健保組合の財政状況改善

これらが中長期的に企業収益の拡大と企業価値の増大に貢献することが期待されるわけです。
そして、こうした観点からすれば、企業の「健康経営への取組状況」は、ここ十数年の間に、欧米投資家中心に急速に広まり、残高が膨張し続けているESG投資(※)の投資手法に組み込まれるべき重要なファクターであると考えられます。
実際、欧米の投資家の間では、「健康経営への取組」はESGの中の“S”(社会)のカテゴリーに含まれるものとして重視されているのですが、わが国においては、まだ投資尺度としての認識が十分に広まるには至っておりません。

その要因として考えられるのは以下の点です。

・日本においては、まだ欧米に比べてESG投資自体の歴史が浅いこと
・健康経営への取組は始まったばかりなので、健康経営取組企業の中長期的な株価・業績パフォーマンスの優位性が検証できていないこと

また、現状は、企業の中でも、「企業イメージの向上による人材確保」を「健康経営導入」の一番の理由に掲げる企業が多いのが実情です。

IR部門との連携が鍵?

もちろん、労働人口が減少していくわが国においては「人材確保」を主目的とした「健康経営」も、十分に“攻めの産業保健”なのですが、今後、中長期の資金を運用する年金資金やベンチャー・キャピタルなどの投資家が、投資銘柄をスクリーニングする段階で、健康経営に積極的でない企業を投資対象から除外する動きが出てくる可能性もあり、そうなれば、上場企業の場合、株価への影響も大きいですし、未上場企業の場合でも資金調達に影響が出てくるケースも考えられます。
従いまして、今後、企業サイドの「健康経営」への取組においては、健康経営への施策自体も勿論ですが、自社のIR(Investor Relation)部門との連携を強化し、ホームページや有価証券報告書等において、自社の健康経営に関わる取組み状況、具体的施策、そして成果を積極的に開示していく体制を作ることが極めて重要になってくるといえるでしょう。

<脚注>
※ ESG投資とは、従来のような企業の財務情報だけでなく「E=Environment:環境」、「S=Social:社会」、「G=Governance:企業統治」という3つの領域に対する企業の取り組み姿勢を考慮して行う投資のことです。
たとえば、環境に関していえば、天候変動の大きな要因とされるCO2排出量の削減への取組み、社会に関しては人権問題への対応、そして、企業統治では法令遵守、社外取締役の独立性などが該当し、そこに積極的に配慮した経営をしている企業を投資対象に組み入れ、また逆に不熱心な企業は投資対象から除外するといった投資手法です。

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浅田 徹也

浅田 徹也株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

金融業界出身であることを活かし、一味違う視点から産業保健・健康経営を考えていきたいと思います。 

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