気をつけて!「野菜ジュースを飲む=野菜を食べる」ではありません!

「野菜ジュース飲んでたら、野菜摂ってるのと変わらないよね?」

ドクタートラストでは最近、従業員がオフィスの近くへ転居することが増えてきました。
「1人暮らしはじめたんですよね」なんて話になるといつも生活状況を伺ってしまうのが保健師のサガ……。
「今まで実家だと自炊とか食生活の管理が大変に感じない?」
と質問を投げかけたところ、

「自炊はまったくしないですね。残業終わって家に帰ったら疲れていて、レトルトやインスタント食品が楽で……。でも、野菜ジュース飲んでるから大丈夫です!」

産業保健新聞を見てくださっている方のなかにも「あれ?こういうセリフ言ったことあるかもしれない」「うちの職場でもこんな話聞いたことあるぞ」と心当たりのある方もたくさんいらっしゃるのではないかと思います。
仕事をしながら慣れない家事が始まると、やはり怠りがちになるのは自身の生活管理。
うんうんと頷きながらも、ふと疑問に思うのは「野菜ジュースを飲むことは、野菜食べていることと変わらない」という言葉。
今回は、おそらく多くの人が考えたとこのある野菜ジュースについて書いていきたいと思います。

野菜ジュースは野菜を食べる代わりになるのか

結論を先にお伝えしますと、野菜ジュースは、野菜を食べる代わりにはなりません。
農林水産省の実践食育ナビでは、以下の通りに記載されています。

<野菜ジュース>
飲んだ重量の半分量を「野菜」として扱います。
通常、1回で飲み切ることができる紙パック(200ml)が副菜「1つ」となります。
(参考ページ:実践食育ナビ(農林水産省)

厚生労働省は1日に野菜350g以上を目標値と定めています。
そのため多くの野菜ジュースのパッケージには、「野菜350g分使用」の記載が目立ちます。
上記のような野菜ジュースと野菜の食品成分を比較すると以下のようになります。

野菜成分比較表

糖質の量は大きくは変わらないのに対し、食物繊維はジュースになることで5分の1程度に減少してしまっています。
野菜ジュースでは、野菜を搾汁したり、飲みやすさやおいしさを追求するなかで繊維質が除去されてしまうことが多いようです。

体が吸収する栄養面の差

ハーバード大学、ケンブリッジ大学、シンガポール大学の研究者は、2013年に以下のことを明らかにしています。

・週3回糖質の少ない果物を食べていた人は、糖尿病のリスクは10%低下していたが、100%果汁のジュースを毎日飲む人は糖尿病発症リスクが21%増加していた
・ジュースを果実に置き換えたところ糖尿病発症のリスクは7%低下していた
(参考:フルーツの消費と2型糖尿病のリスク:3つの前向きコホート研究

上記の表でご覧いただいたように野菜ジュースと野菜そのものを比較すると、野菜ジュースは野菜にくらべて食物繊維が減少しても糖質の量はほとんど同じ量を含んでいます。
食物繊維が糖尿病の発症予防に非常に効果が高いため、ジュースよりも野菜そのものを摂取することが大切になってきます。
そして、次に吸収の速さも要因であると考えられます。
水分で摂取した栄養素というのは消化にかかる時間が短いため固形で摂取した食品よりも吸収にかかる時間が少ないのです。
さらに、水分での摂取になるので吸収も早いとなると、水分として摂取した多くの糖質は体内で急速に血糖値を上昇させ、インスリンの分泌を促進します。

野菜ジュースはあくまでも補助食品の一つとして捉えましょう

さて、ここまで野菜と野菜ジュースの差ついて書いてきました。
ここまで読むと、「糖尿病のリスクを高める悪いものなのでは……」と思われるかもしれませんが決してそうではありません。

野菜ジュースは、1日3食、バランスの良い食事を意識したうえで、足りない栄養素を補うために飲んでいただくのが最適かと思います。
手軽に栄養分が摂れる、忙しい現代人にとっては救世主のような、頼みの綱のような存在の野菜ジュースですが、「過ぎたるは及ばざるがごとし」です。

たくさん野菜ジュースを飲めばいい!
とお考えの方が改めて正しい知識を身に着けていただける機会になれば幸いです。

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