害になる? 鉄は摂りすぎにも注意

「鉄分を多く摂ったほうがよい」

これはよく言われることですね。
多忙な働く世代は食事が不規則で偏りがちになること、特に女性は月経による出血や妊娠・出産に伴う鉄需要の増加、またダイエットによる栄養不足などで鉄分が不足してしまうことが多いのは事実です。
では、鉄分は多く摂れば摂るほど体にいいのでしょうか?

鉄は体の外に排泄されない

ビタミンB群やビタミンCなどの「水溶性ビタミン」と呼ばれるものは、多少多く摂りすぎたとしても、体に吸収されない余分なものは尿中に排出されます。
一度にたくさん吸収しても体に貯めておくことはできませんが、余分なものは体の外に排出されるしくみになっています。
ビタミン剤や栄養ドリンクを飲んだ後に尿の色が変化したりすることがあるのはこのためです。
ところが鉄というのは体の中に代謝したり排出する機能がないため、過剰になってしまった場合は体の中に溜まっていくしかないのです。
この貯まった鉄がどこに行くかというと、肝臓などの臓器や皮膚、まれなケースでは心臓に沈着することもあり鉄が「毒」となってしまうのです。
万が一このように鉄が臓器に沈着してしまった場合は、血を抜く瀉血療法などの特殊な治療が必要になったりと大変な状態になることがあります。

鉄の需要は加齢とともに減っていくもの

基本的に食事から摂取する鉄の量でこのような鉄の沈着を起こすことはありませんが、肝炎等で肝臓が弱っていたり再生不良性貧血などの特別な病気を持っている場合には鉄の沈着を起こすことがあります。
また、年齢や性別によっても必要な鉄の量は変化します。
たとえば月経のある女性なら毎月一定量の鉄が失われていくため、常に補充が必要な状態といえます。
しかし、閉経後の女性や男性でも年齢を重ねていけば、自然と体の鉄の需要は減っていくので、それほど多くの鉄は必要ないのです。

必要性を見極めて

「鉄分を多く摂った方がよい」

これは決して間違ったことではないのですが、年齢や性別などライフステージによってその必要性が異なることに注意しましょう。
閉経後の女性がなんとなく体にいいからと鉄のサプリメントを服用したり、漫然と鉄剤を飲んだりすると、かえって肝臓に負担をかけてしまうことがあります。
「鉄が足りないかな? 貧血かな?」と思った時は、まず健康診断の結果や医療機関を受診するなどして、きちんと必要性を把握してから服用することが大切なのです。

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田中 祥子株式会社ドクタートラスト 産業保健部 保健師

投稿者プロフィール

企業の健康管理室で働いていた経験をさまざまなかたちで皆さまにお届けします。
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