「つながり」のある職場は働く人を健康にする

長生きをしたければ「タバコを吸わない」「酒を飲み過ぎない」とはよく聞く話ですが、そういったこと以上に長寿に大きな影響を及ぼす要因があります。
それは、人と人との「つながり」です。

孤独は喫煙や肥満より危険

2010年、米国ブリガムヤング大学の研究者らが発表した『社会的関係と死亡リスク(Social relationships and mortality risk)』によれば、長生きへの影響度のナンバーワンは、タバコの吸い過ぎやアルコールの飲み過ぎではなく、運動不足や肥満といったことでもなく、「社会とのつながりの種類や量が多い」ということでした。
また、わが国の認知症研究においても、社会とのつながりが多様な人ほど認知症になりづらいといわれていて、つながりが最も多様な人々の発症リスクは、最もそうでない人々の約半分であるという研究成果を国立長寿医療研究センターが発表しています。
その他、国内外の数多くの調査研究が、人同士の「つながり」が健康に大きく影響することを示唆しており、今や健康や長寿を考えるうえでこれが標準的な見方となっています。

人には人のサポートが必要

なぜ「つながり」と健康に相関関係があるのか、そのメカニズムはまだはっきりとわかっていませんが、「つながり」により人々からさまざまなサポート(ソーシャルサポート)を得られることが健康に良い影響を及ぼすのではないかと考えられています。
共感したり同情したりといった情緒的なサポートや、援助や手助けといった手段的なサポート、健康に有益な情報が得られる情報的なサポートなどです。

人類の歴史を紐解けば、ヒトの脳が他の動物より大きく発達したのは、大自然の中で生き残るためには仲間たちとの協力が不可欠であり、そのためにたくさんのコミュニケーションを行ったからだといわれています。
そのように生きてきた人類にとって、「つながり」が生死に影響を及ぼすという研究成果は、決して的外れではないように思います。

職場のつながりは身体的・精神的健康に影響する

社会生活における「つながり」が人の健康に関係するのと同様に、職場における「つながり」は、働く人の健康に影響を及ぼすといえます。
その根拠となる調査結果があります。

たとえば、2012年に発表されたフィンランドの公務員を対象とした「職場のソーシャルキャピタル」に関する研究。
「ソーシャルキャピタル」とは一般に「社会関係資本」と訳され、集団の関係性が持つ潜在的な力、「つながりの力」を意味します。
この研究によれば、ソーシャルキャピタルが豊かな職場に属している人ほど身体的・精神的健康への好影響が確認され、退職後の死亡に関しても予防的な影響がありました。
この調査以外にも、現在、職場のソーシャルキャピタルに関する研究や実践は世界各国で行われており、そのいずれもが職場の「つながり」と働く人の健康とのあいだの強い相関を明らかにしつつあります。

職場のつながりはストレスチェックで測定できる!

実は、あなたの職場でも「つながり」を簡単に測定することができます。
それは、ストレスチェックです。
ストレスチェックを実施すると、個人ごとのストレス状況を示す受検結果とともに、集団ごとのストレス状況を表す集団分析結果が算出されます。
集団分析結果の中に「上司の支援」「同僚の支援」というストレス尺度があるのですが、それは職場のソーシャルキャピタルをリアルに示す数値です。
「上司の支援」や「同僚の支援」が低い職場は、健康リスクが高い職場といえるのです。

より良い職場環境にしていくためにも、年1回のストレスチェックは必ず受検し、そこで得られるデータを個人的にも、職場としても有効に活用することをお勧めいたします。

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