「時短労働の過酷さ」を知っていますか?

日本人の働き過ぎが終焉に向かう

このところ、わが国において、「時短労働」の機運が高まっています。
働き方改革関連法案が可決されたことで、国が時間外労働の上限を違反する職場を厳しく監督指導するようになったり、時間外労働の割増賃金率が引き上げられるようになるなど、今後ますます国を挙げ、産業界を挙げて、時短労働が推進されていくでしょう。

これは、すばらしい動きだと思います。
これまで自他ともに「働き過ぎ」と認めていた日本人の働き方が、今後は短時間労働の方向に進むようになり、メンタル不調者や過労死する人が減少したり、家事や介護や余暇を今以上に充実できるようになれば、多くの働く人に喜びをもたらすのではないでしょうか。
また、これによって少子化のトレンドが上向きに転じ、働き手が増えるようになれば、将来の年金受給の心配も、多少は和らぐかもしれません。

良いことばかりのように見えますが、心配もあります。
昭和の最終年に社会人となり、平成の30年間をまるまる社会人として過ごした私が感じる気がかりなこと、それが本稿のテーマです。

長時間労働に育てられた時代

私が社会人となった昭和63年は、バブル景気真っ盛り。
「24時間働けますか?」という宣伝文句通りの働き方を、私は体現していました。
仕事をどうにかやり終えて、終電にギリギリ飛び乗るのが日常茶飯事。
終電さえ無視して飲み明かし、始発で帰ってシャワーを浴び、石鹸の香りをプンプンさせて颯爽と出社するのが「できる男」の証のように思っていました。
よく働き、よく遊ぶ。
それがこの時代の流儀でした。

この時代の「よく働く」とは、「長く働く」ことでした。
長く働くことに価値があり、最も長く働く人間が、最も会社に貢献している人間だと認識される時代でした。
この価値観は明らかにナンセンスであると、今の若い人たちは考えるでしょう。
私も今は、そう思います。
一方で私は、この「長時間労働」に育てられました。
長時間労働をしたからこそ、仕事を覚えることができ、仕事におもしろみを感じられるようになったのです。
それは今も私の中に、良いか悪いかは別として、「確信」として残っています。

時短労働は本当に「やさしい」か?

こんな私が今、部下を持つ身となり、次のような問いの答えをなかなか見出せずにいます。

果たして、この時短労働の時代に、私の部下たちは、
仕事の「やり方」を十分に覚えられるだろうか?
仕事に「やりがい」を感じられるようになるだろうか?
今後50年間働き続けるために必要な「何か」を身につけられるだろうか?

これらを部下たちに担保することが、管理職としての私の大きな役割の一つです。
しかし、「非常に難しいなあ――」というのが、今の私の実感です。
短期間のみ有効な仕事のやり方や、やりがいならば伝えられるかもしれません。
けれども、「人生100年時代」を見越した仕事への取り組み方や、モチベーション、学習能力といったものは、一体どうすれば授けられるのか?
管理職たる私の葛藤は、そこにあります。

何が心配なのかといえば、つまりこういうことです。
ゴルフのスコアが100を切っていた頃、私は結構楽しくゴルフができていました。
しかし、練習もラウンドもしばらくサボり、150を切れなくなると、途端にゴルフがつまらなくなりました。
18ホール回ることが、単なる苦痛になったのです。
すなわち、ある程度上手くなければ、成果を上げられないどころか、やり続けることさえ難しいということが、スポーツのみならず言えると思います。

職業人生は、かなりの長丁場です。
この長い旅を続けるために、しかもできるだけ充実した旅にするために、一体どんなスキルや習慣を身につけたらよいのか? その問いに私は未だ答えを出せていないのです。

人生は自分でコントロールするもの

現時点で私がアドバイスできることがあるとすれば、それは、会社や社会の言いなりにはなるなということです。
自分の人生は、自分でコントロールするしかないということです。

例えば、「残業は許さない!」と会社で言われれば、無論、残業はできません。
しかし、それは会社の都合であって、あなたの都合ではありません。
自分の成長にとって必要な「残業」であるならば、例え会社で止められようとも、対価が会社から支払われなくても、やめるべきではありません。
それは単なる「残業」ではなく、「自己投資」と言い換えてもよいでしょう。

その「残業」が、自分のこれからの職業人生にとって必要なものか否か、必要なものであるならば、それをどういうかたちで(資格取得や人的ネットワーク拡大といったかたちにも変わり得るでしょう)、どのように継続していくのか。
そうした判断力が、これからの若い職業人には必須となっていくでしょう。

バブル期には、そのような判断力は自然に身につきました。
長時間労働の時代には、働き方や生き方の良い見本、悪い見本がまわりにあふれかえっていて、それを会議室でも夜中の居酒屋でも、うんざりするほど眺めることができました。
冗長な時間の中で、働き方のコツや勘がいつしか養われたのです。
けれども今、そうした環境は望むべくもありません。

時短労働の時代、それは働く人々にとって、思いのほか過酷な時代ではないでしょうか。
半面、実りの多い時代になるはずですが。

これからの時代の働き方について、もっと具体的なアドバイスができるようになるべく、私は今後も真摯に仕事に取組み、考察を深めていく所存です。
その成果をこれからも投稿してまいります。暫しお待ちください。

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