不妊治療と仕事の両立を目指して

不妊治療の現状

皆さんは日本において、子どものいない夫婦がどれくらいいるかご存知ですか?
国立社会保障・人口問題研究所「2015年社会保障・人口問題基本調査」によると、日本では、子どものいない夫婦では28.2%おり、実際に不妊の検査や治療を受けたことがある(または現在受けている)夫婦は、全体で18.2%、これは、約5.5組に1組の割合となります。
さらに、2015年に日本では51,001人が生殖補助医療(体外受精、顕微授精、凍結胚(卵)を用いた治療)により誕生しており、これは全出生児(1,008,000人)の5.1%にあたります。
つまり約20人に1人です。
(出典:生殖補助医療による出生児数:日本産科婦人科学会「ARTデータブック(2015年)」、全出生児数:厚生労働省「平成27年(2015)人口動態統計の年間推計」による)

不妊治療と仕事の両立調査

2017年度、厚生労働省では、「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査研究事業」のなかで、企業および労働者に対しアンケート調査を行いました。
本調査に回答した労働者全体のうち不妊治療をしたことがある、もしくは、予定している割合は、全体の14%でした。
不妊治療をしたことがある回答者のうち半数以上が仕事と両立していましたが、16%は仕事と両立できず退職し、8%が仕事と両立できず雇用形態を変更しています。

両立できずに仕事もしくは不妊治療を辞めた、または雇用形態を変えた主な理由としては、「精神面で負担が大きいため」、「通院回数が多いため」、「体調、体力面で負担が大きいため」などが上位にあります。
また、不妊治療は「いつ終わるのか」を明らかにすることは困難で、診察時間以外に2~3時間の待ち時間があることが一般的です。

不妊治療と仕事を両立している人のうち、両立が難しいと感じた人の割合は87%。
難しいと感じる理由は、「通院回数が多い」、「精神面で負担が大きい」「待ち時間など通院時間にかかる時間が読めない、医師から告げられた通院日に外せない仕事が入るなど、仕事の日程調整が難しい」が上位にあります。
一方で、企業アンケート調査では、全体の7割近い企業が、不妊治療を行っている従業員の把握ができていない現状が明らかになりました。
不妊治療と仕事の両立に関する従業員や管理職への普及啓発を行っている企業はわずか2%。
不妊治療を行っている従業員も対象となる、相談や面談の機会を設けている企業は14%でした。

「不妊治療連絡カード」の活用

人材を失うことは、企業にとって大きな損失であり、仕事と不妊治療の両立について職場での理解を深め、従業員が働きやすい環境を整えることが必要となっています。
また、不妊や不妊治療に関することは、その従業員のプライバシーに属することで、従業員自身から相談や報告があった場合でも、本人の意思に反して職場全体に知れ渡ってしまうことなどが起こらないよう、プライバシーの保護やセクシュアルハラスメントに配慮する必要があります。

そのため、厚生労働省では、従業員から職場へ理解や配慮を求めるツールとして、
また、仕事と不妊治療の両立支援制度を利用する際に医師または医療機関が発行する証明書等として、「不妊治療連絡カード」の活用も提示しています。
まだ、連絡や申出方法を決定していない企業様は、ぜひご活用ください。

不妊治療に関する制度

従業員へのフォローについて、本調査では、不妊治療に特化した制度がある企業は19%と少数であることがわかりました。
制度例は、以下となります。

(1)不妊治療のための休暇制度
(2)不妊治療に係る費用等を助成する制度
(3)不妊治療のための通院や休息時間を認める制度
(4)不妊治療のために勤務時間等の柔軟性を高める制度

また、不妊治療を行っている従業員が利用できる柔軟な働き方を可能とする制度を導入している企業は43%で以下の制度があります。
・半日単位・時間単位の休暇制度
・始業・終業時間の繰り上げ・繰り下げ制度
・フレックスタイム制度
・失効年休の積立・用途を限定した利用制度
・テレワーク制度(在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス)
・裁量労働制度

働き方改革で、多種多様な勤務を検討されている企業も増加しています。ぜひ貴社の取り組みのヒントとなれば幸いです。

参考
・厚生労働省「不妊治療と仕事の両立に関して厚生労働省として初めての調査を実施しました」
(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000197936.html)
・国立社会保障・人口問題研究所「2015年社会保障・人口問題基本調査」
・日本産科婦人科学会「ARTデータブック(2015年)」
・厚生労働省「平成27年(2015)人口動態統計の年間推計」

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