2020年がデッドライン―職場に求められる受動喫煙対策とは―

2018年7月18日、改正健康増進法が参議院で可決・成立しました。
今後は経過措置を経たうえで、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年4月に全面施行される見込みです。
今回の改正は、受動喫煙対策を強化することに主眼が置かれているため、「受動喫煙対策法」あるいは「受動喫煙防止法」ともいわれています。
以下、本稿では「受動喫煙対策法」といいます。

受動喫煙対策法は、特に飲食店への影響が大きいことが話題となっていますが、ここは「産業保健新聞」。
読者の皆さんにお役立てていただけるよう、「職場」での影響や対応についてご紹介いたします。

現行法では努力義務

そもそも現行の受動喫煙対策が、法律でどのように定められているかご存知でしょうか。
受動喫煙については「健康増進法」の25条で定められています。

第二十五条 学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。

職場は上記各種施設のうち「事務所」に該当し、「受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない」とされています。
わかりやすくかみ砕いていうと、「受動喫煙を防止するために努力しましょう」ということで、仮にこれを守らなかったとしても、特にお咎めはありません。

受動喫煙対策法ではルールが厳格になる

このように現在は「がんばりましょう」レベルの受動喫煙対策ですが、2020年に受動喫煙対策法が施行されて以降は、厳格なルールが設定されます。

① 原則的に「屋内禁煙」

原則的に職場などの屋内での喫煙は禁止となります。
こう書くと、「原則があるなら例外もあるの?」と思われる方もいらっしゃるでしょうがまさにその通りです。
受動喫煙対策法施行後も、室外への煙の流出防止措置の施された「喫煙専用室」を設置するのであれば、屋内での喫煙が可能になります。
また、この「喫煙専用室」については、基本的に「喫煙するためだけの部屋」であり、飲食等をしてはいけないこととされていますが、当面の間の経過措置として、「加熱式たばこ」については、飲食等のできる「喫煙室」であってもよいとされています(以下、「喫煙専用室」、「喫煙室」をまとめて「喫煙室」といいます)。

たとえば「廊下の片隅に灰皿を置いて喫煙コーナーとしている」といったたぐいのものは、前述「室外への煙の流出防止措置」が施されているとはいえず、「喫煙室」とはみなされませんので、対応が必要です。

② 喫煙禁止場所における喫煙には罰則も適用

受動喫煙対策法が施行されたのちは、喫煙のできる場所が前述のとおり厳格に定められます。
禁煙とされた場所で喫煙した場合、罰則が適用される可能性もあります。

③ 事業者としての求められる対応

職場を管理する事業者側には、主に下記のような対応が「義務」として求められます。

・ 喫煙室だとわかる旨、および20歳未満の立ち入りを禁止する旨を掲示

20歳未満の人を喫煙室に立ち入らせないことも「義務」の一つにあたります。
若い従業員のいらっしゃる職場では、特に留意する必要があるでしょう。

・ 喫煙室以外に喫煙器具や設備を置いてはいけない

事業者の方は、喫煙室を設置するとともに、「喫煙室」以外からは喫煙器具を撤去しなくてはいけません。

・ 求人票に「受動喫煙対策」の内容を明記

こちらは受動喫煙対策法ではなく、関係省令により定められる見込みのものです。
従業員を募集する際、あるいは求人申し込みを行う際には、どのような受動喫煙対策をしているか、具体的に明記しなくてはいけません。

東京都ではすでに条例を制定している

受動喫煙対策法に先駆けて、東京都では「東京都受動喫煙防止条例」を定めています.
施行日は受動喫煙対策法と同様に2020年4月とされています。

職場における受動喫煙対策については、条例も受動喫煙対策法と同様の対応を求めていますが、このような条例は今後各地で制定される見込みです。
条例によっては、受動喫煙対策法以上に厳格なルールが制定される可能性もございますのでご注意ください。

※施行日まではまだ1年以上ありますが、「喫煙室」の設置には費用や時間がかかるものです。
まだ分煙が十分になされていない場合は、職場環境改善の一環として早めに取り組みましょう!

<参考>
・ 「受動喫煙対策」(厚生労働省)
・ 「東京都受動喫煙防止条例」(とうきょう健康ステーション)

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蜂谷未亜株式会社ドクタートラスト 編集長

投稿者プロフィール

出版社勤務を経てドクタートラストに入社。産業保健や健康経営などに関する最新動向をいち早く、そしてわかりやすく取り上げてまいります。
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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