高所作業の関係法令改正―新たなガイドラインが制定―

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厚生労働省は、高所作業での墜落労働災害の防止を目的に、労働安全衛生法の施行令、および労働安全衛生規則の一部を改正する政省令を6月8日、同19日に公表し、それに伴うガイドラインを6月22日に発表しました。
これまで安全帯と呼ばれていた、高い場所で作業を行う場合に使用する命綱等を墜落制止用器具と名称を改め、より安全性の高いものに換装していくことを求めており、墜落を制止する器具の安全性の向上と適切な使用を義務づけるものとなっています。

高所作業での安全確保について

高所作業については、下記のとおり現行の労働安全衛生規則で定めが置かれています。

労働安全衛生規則
(作業床の設置等)
第五百十八条 事業者は、高さが二メートル以上の箇所(作業床の端、開口部等を除く。)で作業を行なう場合において墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けなければならない。
2 事業者は、前項の規定により作業床を設けることが困難なときは、防網を張り、労働者に安全帯を使用させる等墜落による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。
第五百十九条 事業者は、高さが二メートル以上の作業床の端、開口部等で墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所には、囲い、手すり、覆おおい等(以下この条において「囲い等」という。)を設けなければならない。
2 事業者は、前項の規定により、囲い等を設けることが著しく困難なとき又は作業の必要上臨時に囲い等を取りはずすときは、防網を張り、労働者に安全帯を使用させる等墜落による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。
第五百二十条 労働者は、第五百十八条第二項及び前条第二項の場合において、安全帯等の使用を命じられたときは、これを使用しなければならない。

上記にあるように、そもそも高所作業については、高さが2メートル以上の箇所で作業をする場合には、作業床の設置をし、囲い等を設けて墜落を防止することが義務づけられています。

また、作業床を設置することが困難なケース場合もあります。
そういったときに義務づけられているのが「安全帯」と呼ばれる、人が墜落したときに地面まで到達しないように支持物に固定する器具です。

これまでも安全帯を用いることで法的には安全を確保されていたわけですが、冒頭のように、今般改正が行われています。
その背景には何があるのでしょうか。

安全帯の危険性。墜落制止用器具はフルハーネス型が原則に

これまで安全帯と言えば胴ベルト型やハーネス型が多く使用されてきました。
しかし、一部の胴ベルト型安全帯では墜落を制止する機能がなく、また、救助が困難な場所で長時間宙づりになると、身体とのわずかな接地面が腰や腹部を圧迫し、さらなる災害につながる可能性があります。

実際に、胴ベルト型安全帯を正しく使用していた作業者が約85センチ墜落し、約1時間20分後に救出され病院へ搬送されましたが、死亡してしまったケースが発生しています。
そのため、改正後は墜落制止用器具と名称を変え、複数個所で身体を保持するフルハーネス型の使用が原則となっています。

ただし、高さが6.75m以下の場合にはフルハーネス型だと地面に到達するおそれがあることから、胴ベルト型(一本つり)を使用することができます。

安全衛生特別教育の実施

また、今回の改正では、墜落制止用器具を使用する必要がある「高さが2m以上かつ作業床を設けることが困難な作業を行う労働者」に対しての安全衛生特別教育を実施することも義務づけています。
この特別教育は学科が4.5時間、実技が1.5時間となり、それぞれ下記の科目となります。

【学科】

① 作業に関する知識(1時間)
② 墜落制止用器具に関する知識(2時間)
③ 労働災害の防止に関する知識(1時間)
④ 関係法令(0.5時間)

【実技】

墜落制止用器具の使用方法等(1.5時間)

この特別教育については例外として、一定の条件を満たせば受講を省略できるものもありますが、危険作業への慣れは災害を引き起こす大きな要因となりますので、すべての労働者に受講していただいほうがよいでしょう。

改正、ガイドラインに則した対応を

今回の改正は平成31年2月1日から施行されますが、現在の安全帯が施行後すぐに使えなくなるわけではなく、現行の規格に適合している安全帯は平成34年の1月1日まで使用が可能です。
ただし、改正後の墜落制止用器具の構造規格については、2019年の1月頃に告示される予定であるため、労働者の安全を確保するうえでは、告示され次第速やかに新たな規格に適合する墜落制止用器具の準備が必要でしょう。

<参考>
・ 「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」(厚生労働省)
・ 「安全帯が「墜落制止用器具」に変わります~安心・安全な作業のため、適切な器具への買い替えをお願いします~」(厚生労働省)

山中 学

山中 学株式会社ドクタートラスト 産業保健部

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