安心できないB判定の存在

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健康診断が近づくと、突如として「生活習慣改善プロジェクト」が始まる私。
今年も「血液検査結果をよくしよう!」と目論んで、4月以降は青背の魚(イワシ、サバ、サンマ)をやたら食べております。
先日、テレビの健康番組で「健康診断B判定の落とし穴」と称して、B判定にもハイリスク者がいると紹介されていました。
こういう放送があると「結果にB判定あったけど私は大丈夫かな?」と不安になる人もいるのでは。
会社の従業員の健診結果を取り扱っている人事担当者ならなおのこと、「え……、Bなら大丈夫なのではないの⁉」と思いますよね。
今回は、この「落とし穴」が何なのかを一緒に見ていきましょう!

 B判定で安心するなかれ

ここで健康マナブさん(仮名)に登場していただきます。
マナブさんの健康診断結果は以下のとおりでした。

・ HDLコレステロール35(mg/dl):B判定
・ LDLコレステロール140(mg/dl):B判定
・ 中性脂肪285(mg/dl):B判定

このようにすべての項目がB判定だったため、安心して病院へはまったく行きませんでした。
会社からの受診勧奨も当然ありません。

マナブさんは喫煙者なのですが、こうした結果を得たことで「俺はたばこを吸っているのに、健康診断では悪いところがまったくなかった! 健康そのものだ」と周りに自慢するほどでした。

ところが、ある冬の日の朝、会社の階段で恐怖を感じるくらいの胸の痛みに襲われました。
心筋梗塞の発作です。
幸いにも同僚がその場に遭遇し、救急車を呼んでくれたため、病院で適切な治療を受けることができ、大事に至ることはありませんでした。

健診結果はB判定で、一見すると健康に思われるマナブさんが心筋梗塞の発作を起こしたのはなぜでしょうか。
「健康診断判定のミス⁉」と勘ぐる人もなかにはいらっしゃいますよね。
発作を起こした理由、それは複数のリスクが混在していたからです。

ここで健康診断の「判定区分の基準値」をみてみましょう。
以下は、人間ドック学会判定区分です。
この判定区分は健康診断を実施する機関によって異なるため、あくまで一例です。

A:異常なし
B:軽度異常
C:要経過観察・生活改善
D:要治療、要精密検査
E:治療中

次に、LDLコレステロール値について、B判定「軽度異常」の範囲を医療機関ごとにみていきましょう。
なお、以下の医療機関はすべて架空のものです。

B判定の「基準範囲」(LDLコレステロール)
・ 甲医療機関  100~110(mg/dl)
・ 乙医療機関  110~130(mg/dl)
・ 丙医療機関  120~140(mg/dl)

医療機関によってB判定の「基準範囲」がまったく異なっていることがわかります。
仮に同じLDLコレステロール値であっても、丙医療機関ではB判定(軽度異常)、甲医療機関ではD判定(要精密検査)になるということがあり得るくらい、基準範囲は機関ごとに違います。

「基準範囲」とは、健康な人の集団の検査値をもとにして、上のほうと下のほうを除いた真ん中部分95%の人が含まれる範囲のことです。
機関ごとに「健康な人」の選び方が異なるため、結果としてこのような差異が生じます。
たとえば、喫煙の量など、健康状態により厳しい条件を設定して「健康な人」を絞りこめば、基準範囲は変わってきます。

健康診断結果を受け取る側からすれば、D判定やE判定であれば「病院(医療機関)に行かなくては!」と思いますが、B判定やC判定だったら「軽度異常」基準値を少し超える程度ですし、そんなにリスクがあるとは感じられません。
しかし、上記のような理由から健康診断結果に「B判定」しかないとしても、マナブさんのように非常にハイリスクになることがあります。
B判定は、健康診断機関のミスでもなんでもないのです。

動脈硬化のリスクを知る「LH比」

健康診断結果から、要精密検査・要治療と判定された人だけに対して事後措置していると、本当に予防すべき人を抽出することができません。

単独の項目ももちろん重要ですが、生死にかかわる心血管疾患発症リスクを判定するうえでは、複数の数値から導き出される「LH比」が重要です。
健診結果には載っていませんが、結果表さえあれば簡単に計算できます。

LH比 = LDLコレステロール値(悪玉) ÷ HDLコレステロール値(善玉)

注意が必要となる境界線の数値は「2.5」。
「LH比」が2.5を超えている場合は、じわじわと動脈硬化が進行している可能性があります。
A判定、B判定の人であっても2.5を超えている人は注意が必要です。

また、動脈硬化を起こさないためには、2.0を超えていないことが望ましいといわれています。

そして、4.0以上の場合は特に注意してください。
心血管疾患の発症リスクが2.0以下の方に比べて3.4倍に跳ね上がります。
まさに先ほど例示したAさんのケースですね。

お手元の健診結果を確認し、ご自身のLH比を算出してみてください。
もし4.0を超えていた場合は、医療機関に健診結果を持参し、頸動脈エコー検査を受けることをお勧めします。
自分の動脈硬化具合を確かめることができますよ。

もちろん睡眠食事運動といった、基本的生活習慣の見直しも必要です。
インスタント食品や加工食品(カップめんや菓子パン)摂取量を減らす、青背の魚を食べる機会を増やす、週に2回以上60分の運動をする、年齢ごとに必要な睡眠時間を確保する……。
一つでもできることがあれば始めてみましょう。

自分でできるリスクチェック

リスクチェックには、国立がん研究センター社会と健康研究センター予防研究グループが作成した「循環器疾患リスクチェック」のWEBリスク診断もお勧めです。
自分の健康診断結果を入力することで、将来的に心血管疾患にどのくらいかかるリスクがあるかを算出できます。
このリスク診断は優れもので、たばこを辞めるなどの生活習慣を改善した場合に、リスクがどのくらい減少するかをシミュレーションすることも可能です。

大切なのは
・ 本当にリスクのある人を見極めるために、複合リスクをみる
・ 基準値を過信しないで、経年での変化を見る
ということです。

心筋梗塞や脳卒中といった動脈硬化性疾患は、働く世代の死因の2位や3位にランクインしてきます。
1位の「がん」や「自殺」に近い数の人たちが、動脈硬化のために命を落としています。

もしも健康診断結果に不安要素があった場合、まずは社内の健康相談窓口、健康診断実施機関、公共機関(保健センター等)にいる専門家に相談をしてみましょう。

丘桜 エル

丘桜 エル産業保健部 保健師

投稿者プロフィール

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