パワハラに該当する3つの要素を厚労省が公開

2018年3月30日、厚生労働省はパワーハラスメント(パワハラ)の防止策を盛り込んだ報告書(「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書」。以下、「報告書」とする)を公表しました。
報告書では、パワハラにあたる基準として3つの要素が示され、具体例も表記されています。
今回は報告書の内容をご紹介します。

「判断が難しい」パワハラ

パワーハラスメントは職場の環境を悪化させ、従業員のメンタルヘルス不調に関わり、退職や休職、人命に関わることもある問題です。
パワハラという単語の浸透に伴い、今では企業としても人材確保や生産性、企業イメージの観点などから対策に取り組むよう求められています。
以前よりパワハラは指導との線引きが難しいとされていましたが、報告書ではこれまでより踏み込んだ形で定義づけを行っています。

職場のパワーハラスメントの要素

パワーハラスメントは以下の3つの要素から成っています。

① 優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
② 業務の適正な範囲を超えて行われること
③ 身体的もしくは精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害すること

これだけを読んでも、これってパワハラなの? と悩むような事例は出てくることでしょう。
以下に具体事例をご紹介いたします。

パワハラの具体事例

■ 暴行・傷害(身体的な攻撃)
《①から③までの要素を満たすと考えられる例》
・ 上司が部下に対して、殴打、足蹴りをする

×《①から③までの要素を満たさないと考えられる例》
・ 業務上関係のない単に同じ企業の同僚間の喧嘩(①、②に該当しないため)

■脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
《①から③までの要素を満たすと考えられる例》
・ 上司が部下に対して、人格を否定するような発言をする

×《①から③までの要素を満たさないと考えられる例》
・ 遅刻や服装の乱れなど社会的ルールやマナーを欠いた言動・行動が見られ、再三注意してもそれが改善されない部下に対して上司が強く注意をする(②、③に該当しないため)

■隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
《①から③までの要素を満たすと考えられる例》
・ 自身の意に沿わない社員に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりする

×《①から③までの要素を満たさないと考えられる例》
・ 新入社員を育成するために短期間集中的に個室で研修等の教育を実施する(②に該当しないため)

■業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
《①から③までの要素を満たすと考えられる例》
・ 上司が部下に対して、長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずる

×《①から③までの要素を満たさないと考えられる例》
・ 社員を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せる(②に該当しないため)

■業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
《①から③までの要素を満たすと考えられる例》
・ 上司が管理職である部下を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせる

×《①から③までの要素を満たさないと考えられる例》
・ 経営上の理由により、一時的に、能力に見合わない簡易な業務に就かせる(②に該当しないため)

■私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)
《①から③までの要素を満たすと考えられる例》
・ 思想・信条を理由とし、集団で同僚1人に対して、職場内外で継続的に監視したり、他の社員接触しないよう働きかけたり、私物の写真撮影をしたりする

×《①から③までの要素を満たさないと考えられる例》
・ 社員への配慮を目的として、社員の家族の状況等についてヒアリングを行う(②、③に該当しないため)

パワハラをなくすために

パワハラは自分自身がするつもりがなくても、いつの間にか加害者となってしまっている可能性もあります。
相手の立場や性格を考えコミュニケーションをとっていくことが大切です。
また、企業としても業績偏重の評価制度や 長時間労働等の、パワーハラスメントの加害者となる労働者に大きなプレッシャーやストレスがかかる環境を取り除く事も重要なのではないでしょうか。

参考:厚生労働省「「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」報告書」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000201268.html

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