集団分析結果をどう活かすか

平成27年12月から始まったストレスチェックも数回の実施を経て、社会に浸透してきている印象を受けています。
ただそういった中、今でも多く聞かれる声が「集団分析の活かし方がわからない」「職場環境改善に結びつかない」といったご意見です。
そこで今回は集団分析結果の活かし方・使用例について、改めて考えてみたいと思います。

集団分析結果だけで一喜一憂しない

まず始めに、集団分析結果を用いる際に知っておくべき点として、この結果だけがすべてではないということを認識してください。
集団分析自体が労働者の主観的な評価を平均化したものであり、必ずしも実際の職場環境を反映した結果になるとも限らないのです。
たとえば上司・同僚の支援が全国平均点より大きく下回っていたとしても、業種によっては、業務上の理由で自分ひとりで完結する仕事が多く、他者の支援を必要としないケースもあり、結果だけでは一概にすべてを語ることはできません。
つまり、集団分析の結果は、職場環境改善を行うための材料の一つとして捉えることが重要なのです。

職場環境改善の事前準備

さて職場環境改善を実施するにあたっては、まずは以下のことに注意し、準備・計画をしていきましょう。

① 事業場内外の良好事例の収集

自分達の職場に限らず、同業種や一般的な事例について良好な事例を集めておいて、参考にしましょう。
この際に、事例集を作成して容易に引き出せるようにすることも重要です。

② 改善策の検討には労働者の意見も反映

実際に職場環境改善を検討するに当たっては、労働者の意見も反映できるよう、その吸い上げ方についても考えていかなければなりません。
この場合には労働者参加型のワークショップが効果的です。

③ 職場環境改善には幅広い視野を持つ

単純に職場の環境を変えるだけでなく、労働条件や心身の負担に関することなどにも目を向けることで多角的な職場環境の改善が実施可能となります。

職場環境の改善は主に3つのアプローチで考える

ここまで準備を行えば、次は実際に職場環境改善の実施を考えていきます。ただ、一口に職場環境改善と言ってもその手段には複数の方法があります。

① 事業者が主体として行う職場環境改善

これは事業者が自ら率先して行うか、もしくは安全衛生委員会を用いて職場環境改善策の立案・実施を行っていく方法です。
判定された集団分析結果をもとに、制度の見直しや、管理監督者を対象とした教育研修を企画するなど、該当部署に対する指示を出していくこととなります。
産業医が安全衛生委員会に参加している場合は、その方法についてアドバイスをもらうことも重要です。

② 管理監督者が主体として行う職場環境改善

管理監督者(所属長)に自身の部署についての集団分析結果を示し、自主的な改善の立案・実施を行ってもらう方法です。
この場合でも、監督者に任せたままにせず、進捗状況やその効果については安全衛生委員会で議論していくようにしましょう。
もしこの方法で一定の改善が見えた場合には、先ほどの良好事例に追加することで、今後の参考資料としても使用することができます。
また、普段安全衛生委員会等に出席していない管理監督者は、集団分析結果の見方などで判断に迷う場合が考えられますので、産業医や衛生管理者など産業保健スタッフがその見方や計画の立案について支援をすることが重要です。

③ 労働者参加型で行う職場環境改善

これはワークショップなどを用いて、当該部署の集団分析結果を管理監督者と労働者が話し合いながら職場環境改善の立案・実施をしていく方法です。
労働者の声を反映した改善計画となるため、もっとも効果がある方法とされています。
この場合に産業保健スタッフはワークショップの企画、実施の支援や、活発な意見交換が出来るようサポートすることが重要な役割となります。

集団分析結果を活かすために

集団分析結果を用いた職場環境改善の方法について、イメージはできましたでしょうか。
最後に、職場環境改善を行う際に役立つツールについてご紹介致します。

・ 厚生労働省「こころの耳 職場改善のためのヒント集(メンタルヘルスアクションチェックリスト)」
・ 産業医科大学「職場のメンタルヘルス対策ガイド」

集団分析結果は、それ単独では職場環境改善への有効なデータとはいい難いものです。
労働者への聞き取り調査の結果や、管理監督者が日々の運営で感じていることなどさまざまな情報を総合し、職場環境改善を行っていただければと思います。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

解説動画つき記事

  1. 【動画あり】2022年6月施行「改正公益通報者保護法」を専門家がわかりやすく解説!退職者や役員も保護対象になる⁉

一目置かれる健康知識

ページ上部へ戻る