通勤中の事故~労災になるケース・ならないケースとは?

2017年11月15日に東急田園都市線で架電トラブルが発生しました。
この約4時間半に及ぶ遅延は通勤ラッシュを直撃したこともあり、約12万6千人に影響がでました。
遅延が発生すると駅に人が大勢たまりホームから落ちそうになったり、階段を降りる際に押されて転びそうになりヒヤリとした経験はありませんか?
このときにケガをした場合は労災として認められるのでしょうか?

また、遅延を回避するために会社に申請している経路とは別に経路で出勤中に事故に遭った場合はどうでしょうか?
もしものときのために、確認をしておきましょう。

そもそも「労災」とは

「労災」とは「労働者災害補償保険」を指します。
これは、業務上の事由または通勤による労働者の負傷・疾病・障害または死亡に対して労働者やその遺族のために、必要な保険給付を行う制度です。
この労災保険で扱われる災害には「業務災害」、「通勤災害」、「第三者行為災害」の3つがあります。

今回お話する通勤中の事故は「通勤災害」にあたります。

労災における「通勤」とは

通勤災害とは、労働者が通勤により被った負傷、疾病、障害または死亡のことです。厚生労働省は「通勤」を下記の通り定めています。

「通勤」とは、就業に関し、次に掲げる移動を合理的な経路および方法により行うこと。

(1) 住居と就業の場所との間の往復
(2) 就業の場所から他の就業の場所への移動
(3) 住居と就業の場所との間の往復に先行し、または後続する住居間の移動

業務の性質を有するものを除くものとされていますが、移動の経路を逸脱し、または、逸脱または中断の間およびその後の移動は「通勤」とはなりません。

(2)は兼業をしている場合、(3)は単身赴任等をしている場合に当てはまります。

「労災」が認められないケース

「逸脱」・「中断」を行った場合は通勤とは認められないため、労災は認められません。
「逸脱」とは通勤とは関係のない目的で経路を外れること、「中断」とは通勤と関係のない行為をすることです。
どのような行為が当てはまるのか下記の具体的なケースをみてみましょう。

・ 帰宅途中に飲食店に立ち寄り、食事をする
・ 会社の飲み会に参加する
・ 出張後、業務と関係のない場所に立ち寄る
・ 遠回りになるが景色のきれいな経路を使う

ただし、この逸脱・中断には例外があります。日常生活上必要な行為であり、下記の厚生労働省が定める例外行為に該当するものは逸脱・中断としてみなされません。

(1) 日用品の購入その他これに準ずる行為
(2) 職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するのものを受ける行為
(3) 選挙権の行使その他これに準ずる行為
(4) 病院または診療所において診療又は治療を受けることその他これに準ずる行為

「労災」が認められるケース

では、労災保険が認められるにはどのような条件があるのでしょうか。それは移動が「合理的な経路および方法」であるとみなされることです。
途中で寄り道をせずに、常識的に考えて妥当な経路や方法で往復をすること、といえるでしょう。
また、事前に会社に申請している経路と異なる場合でも、合理的とみなされれば労災は認められることを覚えておいてください。

では、具体的なケースを確認してみましょう。

・ 渋滞を避けるために遠回りをする、タクシーを使う
・ 電車で通勤しているが、健康のためまれに自転車で通勤する
・ 営業等で客先から自宅に直帰する
・ マンションの共有スペースでの転倒
・ 配偶者が入院している病院からの出勤
・ ガソリンスタンドに寄って燃料補給を行う
・ 託児所に寄って子供を預ける

このようなケースは、合理的とみなされ、通勤災害として労災認定されます。
もし、通勤中に事故に遭ってしまったら! 自己責任だし…とは思わずに、労災が認められるか考えてみましょう。
会社に迷惑がかかってしまうから労災を使わないでいると、会社が労災隠しとして指摘されてしまうかもしれません。
また、労災保険を使って受診・治療をすることで、費用の自己負担はほぼゼロになります。
さらに、会社を休んで入院治療をする程の怪我を負ってしまった場合、私傷病有休を使うよりも労災給付を利用したほうが、多い額の休業補償を受け取ることができます。

労災を使うことはあなたが安心して働くための大切な権利です。
病院にかかるときは「労災を使います」と伝えるのを忘れずに!

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坂田 ひとみ株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

大学では臨床心理学を専攻し、メンタル不調に陥る前にできることはないのか疑問に感じました。働く世代のメンタルに興味をもつ中で「産業保健」という分野のドクタートラストを知り入社。医療職でなくとも働く世代を支えることができる仕事にやりがいを感じ、日々業務に励んでいます。
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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