「本社の産業医がまとめて支店もみる」は違法か?

産業医の選任をはじめ、常時勤務する従業員数が50名以上となる「事業場」は、労働安全衛生法上で数々の義務があります。

「事業場」の範囲

ひとつの事業場であるかどうかは、主に場所的概念(同一の場所か離れた場所か)によって決定すべきであり、同一の場所にあるものは原則としてひとつの事業場とし、場所的に分散しているものは原則として別個の事業場とされています。
(昭和47年9月18日付発基第91号の第2の3「事業場の範囲」にて示されています)

しかし、以下のように例外もあります。

① 場所的に分散しているものであっても規模が著しく小さく、組織的な関連や事務能力などを勘案して、ひとつの事業場という程度の独立性がないものは、直近上位の機構と一括して、ひとつの事業場として取り扱う。
② 同一の場所であっても、著しく労働の態様を異にする部門がある場合には、その部門を主たる部門と切り離して別個の事業場としてとらえることにより労働安全衛生法がより適切に運用できる場合には、その部門は別個の事業場としてとらえる。

月1回の職場巡視は企業義務

したがって、産業医等の選任が必要な事業場であるかどうかは、上記①、②も加味して判断されることになります。
たとえば、全体での労働者数が300人おり、各事業場に以下のように配されていたとします。

本社(労働者60人)
A支店(同60人)
B営業所(同20人)
C工場(同110人)
D工場(同40人)

上記のように事業場がわかれている場合、産業医などの選任が必要な事業場は本社・A支店・C工場となります。
(B営業所・D工場に関しては選任義務はありません)

営業先の企業様で、各支店で労働者数50名を超えているけれど、本社の産業医がまとめてみているという状況を聞きます。
しかし、一つの事業所において、労働者50名以上となっている以上、産業医などの選任は義務となります。
また、選任した産業医による月1回の職場巡視も義務となる以上、少なくとも毎月1回、各支店に産業医が訪問しなければ、法律違反となります。

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