スーパーウーマン・シンドローム ~日本の女性が疲れている!~

男女雇用機会均等法が施行されたのが1986年。
この30年間で、女性の社会進出が進むと同時に、その働き方やケア責任(家事、育児、介護等)の分担など、多くの社会的問題が顕在化してきました。
30年経ち、社会の有り様や意識も大きく変わりましたが、それでもなお日本の働く女性たちの環境には多くの課題があるでしょう。

完璧主義の女性が陥るストレス症状

少子高齢化や格差社会も相まって労働人口が減り、性別やライフスタイルを問わずに多様な働き方を受け入れざるを得ない社会環境となりつつあります。
特に、今女性の就業継続が重要視されています。
しかし、実際はどうでしょう?
「家庭と仕事の両立は、想像以上に難しい…」

そう悩まれているワーキングマザーが多いのも現実ではないでしょうか。
1985年、アメリカの精神衛生学者(マージョリー・H・シェイヴィッツ)が発した「スーパーウーマン・シンドローム」という言葉が注目を浴びました。
定義は、「女性が職業人、妻、母などいくつもの対立する役割を完璧にこなそうとするときに経験する、肉体的、精神的、および対人関係によるストレス症状」です。
特に30代女性に多く、職場では一人前に仕事をしながら、家庭では良き母親や妻として、仕事と家庭を完璧にこなそうとするあまり疲弊して、ストレス過多によって心身に異常をきたす状態です。
いわゆる、ワークキングマザーのうつ状態です。

ワーキングマザーのジレンマ

ワーキングマザーは、ある程度の年齢まで職歴を積み、育児休暇後に同じ職場に復帰している場合が多いため、それなりの知識や経験があり、責任あるポジションに就いている場合も少なくありません。
仕事にプライドを持ち意気揚々と職場復帰______ところが、現実には様々な壁が阻んでいるようです。
残業できない、時短勤務、子どもの体調不良により急に休まなければならない。
当然、復帰前と同じパフォーマンスを出せるはずがないのですが、なぜか自分も周りも「頑張ればできる!」との思い込みがあり、無意識にワーキングマザーのハードルが上がっているのです。

他にも、以下のようなジレンマがあります。

■共働き世帯が増えたにもかかわらず、依然として家事育児は女性に偏っている。
■「時短労働者」というだけで、適正に評価されない。
■職場においてマイノリティである場合が多く、周囲と認識のずれがある。
■時短や急な休みが多いことで、嫌味や叱責、肩身の狭い思いをする。

周りからの評価は?

一人がいくつもの役割を掛け持つということは、想像以上に負荷がかかるものです。
複数の事柄を同時並行で行う必要があり、かつ複数の責任を自分だけが負わなければならないからです。
一つの役割に歪みが生じれば、ドミノ倒し式に他の役割にシワ寄せが行きます。それを立て直すのも自分です。

また、ワーキングマザーの疲弊の原因として、「評価されにくい」という特徴があります。
複数の役割をこなしていても、その全体像を知っている人は自分以外にいません。
上司や同僚が見るのは仕事の面だけ、家族が見るのは家庭での姿だけです。
一日中頑張っていても、周囲からの評価は、「仕事も半人前(残業可能な男性社員と比べて)」「家事育児も半人前(専業主婦と比べて)」となってしまうのです。

人の5段階欲求といわれるものに、「承認」がありますが、やはり他者から認められたいという欲求は人として自然なものです。
「認めてくれる」「分かってくれる」「頑張っているね」このような気持ちや言葉かけによって、同じ状況であっても人は救われたり頑張れたりするものです。

自分の声を発しよう

上記のように、ワーキングマザーはどの立場においても半人前と思われがち…
どのようにすれば合格点なのでしょうか?
合格ラインは誰が決めるものなのでしょうか?

例えば、以下のようなことをヒントにしてみてはいかがでしょうか。

□復職前の自分と単純比較しない。
□立ち止まって考える時間を持つ ――「何のために働くのか?」「自分が大事にしたいことは?」
□時間が解決する。(子どもの成長、社会の認識の変化、事例が増える)
□周囲に頼る。一人で抱え込まない。
□意識して、自分の時間を持つようにする。

高すぎる目標を掲げ、スーパーウーマン・シンドロームに陥ってしまわないために、自分の体験談を語ることも重要だと思います。
なぜなら、自分の抱えている悩みは自分だけのものではなく、社会的なものである可能性もありますし、他のワーキングマザーも同じように悩んでいるかもしれないからです。
また、同じ道を通ってきた先輩女性は必ず存在します。
また、将来同じ道を通る後輩女性のためでもあります。

政府が掲げる「2020年30%(※)」の実現に向けて、国の今後の動向にも期待が集まります。

※2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%に引き上げる目標のこと。

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高橋 さなえ株式会社ドクタートラスト 産業保健部 保健師

投稿者プロフィール

会社員時代に産業保健に興味を持ち、保健師になりました。
企業勤めの経験を活かし、はたらく人にとって身近なテーマを発信させていただきます!

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