ドイツの「労働時間貯蓄制度」とは?

「より短く」から「より柔軟」へ――――

ドイツの労働時間が先進国の中でも最も低い水準にあることをご存じの方も多いでしょう。

これまで〝より短く、より効率的”であることを目指してきたドイツの労働時間ですが、既に時間の長短だけを目安とする従来の均一な労働時間モデルは過去のものとなり、従来の〝より短い”モデルから〝より柔軟”なモデルへと変化しています。

制度の特徴は?

ドイツにおいて実施されている「労働時間貯蓄制度」とは、労働者が「労働時間口座」に労働時間を貯蓄しておき、休暇等の目的で好きな時にこれを使えるという制度で、2008年より施行されています。
従来の均等配分時間原則とは異なり、通常の労働時間を変動的に配分することが可能になります。
つまり、一時的に長時間労働をしても、のちにその分有給休暇が取れる、ということです。

制度導入のメリットとデメリット

・労働時間貯蓄制度のメリット

この制度の導入により、従業員は時間を組み立て、職場外での活動を自由に使うことが可能となりました。
また企業は残業に必要な手続きや追加的な手当の支払いなどの制約を受けなくて済むようになったほか、人材活動の面では、従業員数ではなく労働時間の調整によって実現することが可能になりました。
つまり、「労働時間貯蓄制度」は労使双方に利点が生まれたのです。
具体的には以下が挙げられます。

〇 自らの時間主権を向上させ、ワーク・ライフ・バランスの必要条件を改善することが可能となる
〇 長期休暇を可能にする
〇 高齢労働者の早期引退を可能にする

・デメリット

しかし一方で、この制度が職場のトラブルにつながる場合もあります。
画一的な通常の労働時間と違い、職場外の活動の必要に応じて、日々の労働時間の長さやタイミングを自ら調整しなければなりません。

これは一見して自由度が広がる利点のようにも見えますが、時として労働者にストレスを与えることにもなり得ます。
ただ、この制度を利用している従業員を対象とした調査によると、この制度が施行された2008年時点で利用者の大多数はこの時間管理に関する潜在力をプラスと評価しているようで、反対の評価をしているのはごく少数に過ぎないという結果も出ています。

日本での導入は現実的?

日本企業での有給休暇取得率は近年上がってきているとはいえ、100%には程遠い状況です。
先頃の電通事件を受けた反応を見ても、日本にはまだ、長く働くことを美徳とする習慣が根強くあると感じます。

日本人の勤勉な性格や古くから根付いた習慣を変えるのは容易ではなく、この先もまだ時間がかかるでしょうが、〝自殺大国”と呼ばれてしまう日本を少しづつでも変えていく必要は間違いなくあると思います。(自殺の理由は必ずしも仕事が直結するとは限りませんが、労働環境の改善も自殺防止に役立てると信じています)
今は僅かな数の企業でも意志を持って自社の環境を整えていくことで、世の中に働きかけるきっかけになることはできると、私は考えます。

参考
ドイツの「労働時間貯蓄制度」
働いた時間を「貯金」して有給に変えるって?

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