運送中の事故を防ぐ9つの対策

「お急ぎ」の背景

今や、ネットで買い物は当たり前の時代。
注文した商品が1時間以内に届くということも実現しています。
「お急ぎ」で商品を出荷してくれるサービスを開始した会社が世間をあっと驚かせてくれましたね。
商品を出荷してから、実際に商品を「お急ぎ」で消費者まで運んでくれる運送業の方は、大変な思いをされているのではないでしょうか。
時間に追われるあまり、運送中の事故が起きないとも言い切れません。

運送中の事故はなぜ起こる?

国土交通省が発表した資料によると、平成25年に発生したトラックの事故は、2,053件で、増加傾向にあるようです。輸送の安全の確保を使命とする運送業では、事故件数の減少を課題としています。
では、どうのようにして事故件数を減らしていくべきでしょうか。
やはり、第一に労働者の健康を管理することだといえるでしょう。
運送業界は残念ながらもっとも過労死が起こりやすい業種と報告されています。
トラック運送業においては、深夜早朝を含む長時間の運転や、睡眠不足による疲労の蓄積、また車中泊や睡眠環境の悪さから疲労回復の妨げとなり過労運転への要因にもなっています。
また、荷物の積み下ろしや荷主の対応なども労働者への負担となります。
過労運転により、注意力が散漫となり、事故が起こってしまう原因ともなります。

事故を起こさないためには?

国土交通省は、「トラック輸送の過労運転防止対策マニュアル」を作成し、過労運転による事故を防ぐために、安全対策を呼びかけています。
マニュアルでは次のような、9つの重要な対策ポイントが取り上げられています。

①    事業者が一丸となって、過労事故を防ごう

経営者から、現場の運転者まで、運送の安全が最も重要であることを自覚して、常に輸送の安全性の向上に取り組まなければなりません。
国土交通省は、「輸送安全マネジメント」を推進し、安全性を向上させるにはどのように運営すべきか揚げています。
輸送安全マネジメントの特徴は、経営者に安全確保のための体制を作ることを推進し、国がその制度を評価・改善します。
事業者が作った安全管理体制の取り組み状況については、国が直接経営陣に話を聞き、良い点を評価し、改善点があれば助言します。
安全性の向上を誰か一人に任せるのではなく、全員が意識し取り組むことが重要といえます。

②    過労のメカニズムを知り、質のいい睡眠をとろう

過労の原因、あらわれ方などメカニズムを知り、過労にならない運転の仕方や睡眠のとり方を工夫しましょう。
運転者は、自身の健康管理に日々気を付けて、疲労をためないように心がけ、使用者は運転者の健康を管理し、過度に疲労がたまっていないかなど、配慮することが必要です。
過労の要因は、運転者の日常生活から運転環境に至るまで広範囲でさまざまなことが原因となります。
道路の混雑状況や、タイトなスケジュールなどからくる心理的ストレスも過労の原因となります。
また、慢性的な睡眠不足や、運転座席での仮眠等の睡眠の質の低下が、常態化するとだるさや眠気、注意力の低下につながり運転に集中できません。
使用者は、運転者の様子を常に意識し、過労とみられる運転者がいた場合、スケジュールの管理や、健康管理の推進、休息を促しましょう。

③    点呼を活用して過労運転を防ごう

点呼では、運転者の顔つきや態度の変化を観察して、運転者の様子に変わったところがないか確認し、変化が見られた場合は原因をつきとめ、対策が必要です。
質問内容を毎回の点呼で変えたり、長めの質問をしてみたり、ただの点呼をとるのではなく、運転者とコミュニケーションを図ることを心がけましょう。
乗務前点呼では、前日の睡眠時間や飲酒の有無、薬の服用等確認するだけでなく、運転者の歩き方や態度、服装、目の動き、表情、口臭など観察し、異常が見られれば質問しましょう。
乗務後の点呼では、その日の運転状況の確認や疲れがたまっていないか確認しましょう。
「おつかれさま」といったねぎらいの一言が運転者の励みになることもあります。
安全性の向上のためにも細かな配慮を忘れないように心がけましょう。

④    余裕のある運転計画を活用しよう

運航計画を作成し、実施する際は国からの改善基準告知を遵守しなければなりません。
改善告示を受けたにもかかわらず、是正しなかった場合は行政処分の対象になります。
また、事業者は、道路事情や交通規制などを見越して余裕のある運行計画を作成しましょう。
運転者から申し出があった場合、過労が原因で運転できないおそれがあれば、無理をさせず運転をいったん中止させましょう。
このような申し出があった場合、連絡体制を構築することが必要です。

⑤    健康管理を徹底しよう

健康状態は、過労に及ぼす影響が大きいので、運行管理者は、運転者に日常的に健康管理を行うように適切な指示を行っていく必要があります。
毎回の点呼や健康診断の結果、日ごろの相談の機会まで幅広く活用し運転者の健康状態を把握しておきましょう。

⑥    運転者が相談しやすい職場環境を整えよう

事業者と運転管理者は、運転者が相談をしやすい雰囲気づくりに努め、事業所内に相談しやすい場所を設けるなどの工夫が必要です。
運転者のプライバシーに配慮して休憩室の活用や、普段からのコミュニケーションが大切です。
相談だけでなく、普段のコミュニケーションを図っておくことで、些細な変化に気づけることもあります。
一丸となって安全性の向上を図るため、普段から運転者の体調や変化などに気を付けておきましょう。

⑦    荷主・元請事業者に理解してもらおう

「安全運行パートナーシップ・ガイドライン」を着実に実施していきましょう。
ガイドラインでは、完全確保の責任は運送業者にあるものの、安全確保のためには荷主・元請業者の理解と協力が不可欠であるとしています。

⑧    最新技術を生かして、事故防止に取り組もう

最新安全自動車の導入により、車両面の安全対策を行っていくことも必要です。
国土交通省では、大型自動車に対する衝突被害軽減ブレーキの普及促進のため、補助制度を導入しています。
安全確保のため、自動ブレーキ搭載のトラックの活用なども視野に入れてみてはいかがでしょうか。

⑨    積極的に休息施設を使用しよう

都市圏では、大型トラックを駐車できるスペースが少なく休憩できる場所が多くないため、運行管理者は運転者に大型車が駐車できて休憩できる駐車場やトラックステーションなどの位置を把握し、運転者に利用するよう指導しましょう。
(社)全日本トラック協会では、ホームページにトラックステーションの情報を掲載し、会員の利用を勧めています。
積極的に利用するように、運転者に周知しましょう。

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