人事部のみなさん、オワハラしてませんか?

今日もどこかで新卒採用の説明会や面接が行われていることでしょう。
本年度は、経団連加盟企業を中心に、選考開始が6月に前倒しとなり、ちょうどこの時期、新卒採用はピークを迎えているといえます。
そんな中、今、一つの単語が注目を浴びています。
それは「オワハラ」。

私たちの会社でも、新卒採用活動を行う中、「オワハラを受けている」という学生に会う機会が増え、相談を受けることもあります。
人事部のみなさん、「オワハラ」してませんか?

2社に1社は内定辞退者が出ている状況

オワハラとは、“就活終われハラスメント”の略。
昨年の採用時期から問題となっていたワードです。

今の学生の就職活動は、内定をもらった1社でおしまいにするのでなく、複数社の内定を取り、そこからどの会社に就職するか選択する風潮がみられます。
2016年5月のある調査では、内定をもらっていると答えた学生の内定所有数平均は1.7社。
そのため、2社に1社は内定辞退者が出るという計算です。

「手間もお金もかけて、これはという人材に内定を出したのだから……」
そういった想いから「内定を出すから今後の就職活動を終わりにしてほしい」と学生さんに言う=オワハラをする 企業が増えているというのです。

こんな「オワハラ」していませんか

学生の体験談によれば、オワハラは次のように3パターンに分類されます。

▼内定出しオワハラ
・「あなたに内定を出すような会社は当社しかないから就活をしてもムダ」と人事に言われた
・「今後の就職活動を辞退する」と書かれた内定承諾書への記載をその場で迫られた
・「この場で自社以外の選考中の会社を辞退すれば内定を出す」と言われ電話をさせられた

▼内定後オワハラ
・他社の就活がままならないほど頻繁に、意思確認や懇親会・研修等の理由で呼び出された
・懇親会で妙に高額のレストラン等に頻繁に連れていかれ、会計はいらないといわれる

▼内定辞退オワハラ
・「内定承諾書にサインした後に断ったら法律違反になる」と言われた
・「君が辞退したら、君の大学からは二度と学生を採用しない」と言われた

かなり極端な例も含まれていますが、2015年度の文部科学省調査によると、68.3%もの学生が「オワハラを受けた」と回答しています※1

「うちが内定を出すってことは、もう就活は終わりってことだね。よかったね」
そんな発言もオワハラであると受け取られてしまう可能性があります。
※1 2015年7月、全国の国公私立の大学・短大から抽出した82校と在籍する就職希望の学生3934人を対象に行った調査

内定辞退は法律違反?

そもそも上記の内定辞退オワハラにあるように、学生側が内定後に就活をしたり、内定を辞退することは、法律違反にあたるのでしょうか?

実は法律上は、企業が学生に内定を出した段階で「雇用関係は成立」しています。
内定とは、実際に給金の発生するような雇用状態ではないものの、採用するという意思表示が明確にされている状態。

これを「始期(雇用が始まる時期)付解約留保権付雇用契約」が結ばれた状態とみなし、雇用関係にあると判断されるのです。
そのため、この後、理由もなく一方的に契約を解除することは法律違反です。企業側にも、学生側にも、同じことが言えます。

ただし、現状では毎年、内定を辞退する学生は少なからず存在します。

内定承諾書自体には法的効力はないといわれおり、それを学生に破棄されたとしても、企業は何も言うことはできませんが、上記の雇用関係をもとにかかった費用等について「損害賠償」を求めることはできます。
ただし上記を求める場合、内定後に提出する書類等にその旨を記載しておくことが望ましいでしょう。

しかし、もちろんそうした対応は、学生間の口コミ等で広がる危険性があります。

学生にも誠実に向き合いたい

労働者と企業との間には「労働安全衛生法」や「就業規則」等がある一方、学生と企業との関係性は微妙です。
オワハラ以外にもインターンシップのブラックバイト化等さまざまな問題がとりざたさています。

学生が企業を選ぶ時、「この人と働きたい」「この企業は誠実そう」といった印象が大きくかかわってきます。
社員を財産、人財として大切にするように、学生に対しても誠実に向き合うことがこれからの企業には必要ではないでしょうか。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

大沼 泉株式会社ドクタートラスト ストレスチェック研究所

投稿者プロフィール

結婚・出産・育児といったライフイベントを乗り越えながら女性がいきいきと働くには、どんな職場環境が望ましいのか。ブラック企業から転職し、産休育休を経た経験をもとに、産業カウンセラー、そして働くママ社員の立場からさまざまな情報をお伝えしてまいります。
【保有資格】産業カウンセラー
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

この著者の最新の記事

関連記事

解説動画つき記事

  1. 【動画あり】2022年6月施行「改正公益通報者保護法」を専門家がわかりやすく解説!退職者や役員も保護対象になる⁉

一目置かれる健康知識

ページ上部へ戻る